TabletPCとiPadの違い

iPadを皮切りにタブレット端末が熱い。

新聞にはほぼ毎日関連するニュースが載っているし、家電店店頭では1階の一番良い場所を占めて人だかりが絶えない。

PCがタブレットにお株を奪われるという図式で皆が観測記事を書いている。

スマートフォンも含めたAppleiOSGoogle AndroidというOSバトル、クローズド対オープンというビジネスモデルバトル、電子書籍という新市場に対する期待、企業のペーパーレス化戦略での活用など、いろいろな角度から捉えることができるため紹介の仕方も多様でおもしろい。

 

USでのiPadユーザーの利用傾向としておもしろいと思ったのは、どうやらベッドでの利用が多いようである。寝起きと就寝前にネットでUpdateをチェックというヤツだ。

これまで机に座ってPCを起動してからという手間が省けるということであろう。

 

ところで筆者はその昔、WindowsXP発売の際にタブレットPCの販促に携わったことがある。東芝やNECから意欲的なモデルが発売され、ナレッジワーカーの仕事のスタイルが変わるなどといった書かれ方をして業界の期待が集まったのを覚えている。しかしふたを開けてみればまったくといっていいほど売れなかった。

たしかに重さとUIや操作性を含めて製品としての完成度合いは段違いではある。しかし、生活や仕事の中での基本的な意味合いには大きな差異はない。

10年という時間が何をどう状況を変化させたのか興味深い。

 

インターネットがより身近なものになった。デジタルコンテンツに関するリテラシーが高まった。AnytimeAnywhereコネクテッド欲求が高まった。などなどいろいろな要因はあるだろうが、最大のものはAppleのマーケティングだと思う。

Microsoftの戦略資料はとにかく膨大な量であった。非常に精緻に設計されていてユーザーシナリオも何十も用意されていた。読み通すだけでものすごく疲れたように記憶している。一方のAppleは、直接携わってはいないがとてもシンプルなものと聞いている。

結果としてTabletPCは所詮沢山あるMicrosoftの新製品の一つ、つまりPCのちょっと変わった製品というのが正直な一般の人々の印象だったとすると、iPadはまったく新しいコンセプトの製品という受け取られ方をして成功した。そしてマーケティングの最大の違いが価格だ。TabletPC20万円台のノートPCではハイエンドに近いレンジだったのに対してiPad5万円前後という手頃感。この差は非常に大きい。

 

もう一つの大きな要因はGoogleというライバルの存在だ。

とても疑い深くなった消費者はセカンドオピニオンに敏感である。単にノイズが高まるという効果以上に、一つの旗印で多様性が広がってもその裏側にある意図に敏感で身構えてしまう。これが異なる旗印の下での多様性の場合は、選択の機会の重層性も含めて関与度が高まる傾向があると思っている。

つまり、キャスティングボードは利用者サイドにあると感じられることが重要なのだ。

 

さてさて、企業や組織におけるタブレットの利用はペーパーレスなワークスタイルの実現と紐づけされることが多いが、実際にペーパーレスを実現しようとすると、これまでの紙ベースでの思考に比べ、何倍もの集中力を必要とすることに気づかされる。

行ったり来たりが紙ほど自由にできないタブレットの場合は、企画書一つとっても頭の中にどこにどのような情報があるのかをきちんと理解しておかないとロジカルな考えが難しいからである。これからのナレッジワーカーのスマートなワークスタイルは細かな仕事やレビューにはPCを、創造的なことを求めるディスカッションにはタブレットをという流れになるのではないだろうか?

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